虐待の果ての子殺しなんて、別に珍しくもないのだろうが、自分と縁のある場所で行われるとなぁ……まして、好きな場所で……
「犯人以外は誰も悪くないですよ、あの事件については……」
自分は……本当に子どもを大切に出来るんだろうか……って、不意に怖くなるよ。
事件現場に花を手向けるの……ニュースなんかですごく多く積まれてたりするの、正直よくわからなかったが……自分の中のそういうもやもやの行き所をどこかに置いてこないと落着かないのか。
「人間は自分が他人を傷つけるかもしれないという恐怖を常に感じているのかしら?特に旦那様はそういうところがあるようだけど……」
まあ、そうさな……そういうのは確かにあるな。
無責任に犯人をなじる意見もあるが、本当に自分は子どもを傷つけていないと断言できるのだろうか、って……
「逆に自分は絶対に子どもを、他人を傷つけていない……なんて、むしろ虐待者が言いそうではありますが」
「そうね、傷つけるかもしれないと考えるから、傷つけないようにできるのかもしれないわね」
……正直、この際だから聞くが、セスィウは子ども苦手か?
「そうね……どうしたらいいのか、わからないわね。傷つけるかどうかとかも正直特に考えられないわ。良くも悪くも親に何かをしてもらった記憶がないもの、関わりはせいぜい血がつながっている程度……これもネグレクトに入るのかしら?」
人間とは価値観や文化が違うからなぁ……
「でも、妹のカリウさんやリティウさんとはつながりがそれなりに強かったでしょう?家族という概念はちゃんとあるのでは?ネグレクトかもしれないと思う程度には家族のイメージや関係性があったのでしょうし」
「そうね、あんな母親と、あんな父親と思う程度には……」
あれ?父親……って……ああいや、そりゃいたよな。
「ええ、いるわね」
「何か、話が噛み合ってないような……」
……え?生きてるの?
「死んだなんて言ったかしら?」
いや、だって、母親のフランさん、自分はフリーみたいなこと言っていたぞ。
「……魔族の価値観というか……結婚してないと言うことだったのでは?」
「知らないわ、二人の関係なんて……ろくに会ったこともないと言ったでしょう。まして、二人一緒なんて全くないもの」
マジか……